肝炎とは~ウィルス性肝炎が9割・アルコールへの誤解


肝炎は、肝臓へのウィルス感染やアルコール・薬の取りすぎなどが原因で起きる肝臓の炎症・肝細胞の障害です。


肝炎には、「肝炎ウイルス」という主に肝臓に感染するウィルスによって肝細胞障害が急激に起きる「急性肝炎」、そしてウィルスが体内に長期間とどまって肝機能障害が6カ月以上続く「慢性肝炎」があります(急性肝炎(肝炎情報センター) ご参照)。

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肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど耐性が強く、肝炎になった当初は自覚症状らしきものがほとんど現れません。


しかし肝炎が進行すると、全身の倦怠感・発熱・吐き気・黄疸(おうだん、白目が黄色くなる)などの症状が現れます。

これらの症状は必ずしもはっきり外に現れない場合もありますが、その間にも患者の肝臓は、少しづつ壊れていっているのです。

一般に肝臓の病気は、「ウィルス性肝炎」から「慢性肝炎」、そして「肝硬変」を経て最終的に「肝臓がん」へと進行すると言われます。

慢性肝炎から肝硬変へと進むのに20~30年かかると言われるくらい、病状は非常にゆるやかに進行します。


したがって慢性肝炎になったからといって、通常はただちに命にかかわってくるようなことはありません。

ただし、慢性肝炎には肝機能異常が著しく進行する活動性のものもあるので、発症の予防ないし発症後の早期治療につとめるに越したことはありません。



肝炎の症状悪化は、「急性肝炎」→「慢性肝炎」→「肝硬変」→「肝臓がん」という順番をたどり、肝硬変ともなると黄疸や血管腫が出るなど、はっきりと目に見える症状が表れてきます。

また肝硬変の患者のおよそ半数は、すでに肝臓がんを合併していると言われます。

つまり肝臓の病気はすべからく「慢性化させない」、急性肝炎の段階でしっかり治してしまうことがポイントなのです。


肝炎を分類すると、酒類の飲み過ぎによる「アルコール性」、ウィルス感染による「ウィルス性」、医薬品や健康食品のとりすぎによって肝臓が障害をうける「薬剤性」、そして免疫異常によって起こる「自己免疫性」の、4つになります。

そのなかで全体の9割を占めているのが、「ウィルス性」の肝炎です。日本では肝炎ウィルス感染者の9割が40代以上ですが、最近は若い世代のB型肝炎も増加傾向にあります。


ちなみに、お酒を多く飲んでいると、やがて肝炎になってしまうのではないか…と心配される方がよくいますが、実際のところはすでにウィルスに感染した人が多量のアルコールによって肝炎を悪化させているケースが多く、お酒の飲み過ぎだけで肝炎になることはほとんどない、いわれています(だからといって調子にのって飲みすぎると、脂肪肝やアルコール性肝障害・アルコール性膵炎など他の病気が待ち構えていることは、言うまでもありません)。


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急性肝炎と慢性肝炎~C型肝炎→慢性肝炎の事例が大半


「急性肝炎」は、発熱や吐き気などの症状が現れますが(症状がほとんど現れない場合もあります)、ほとんどは安静にして十分な栄養をとることで数週間程度で治る、一過性のものです。

しかし肝炎ウィルスが体内から排除されずに残り、キャリア(ウィルス保持者)になってしまう場合がありますので、いずれにせよ病院の診察は受けるようにしましょう。


急性肝炎は、A・B・C・D・E型の五つの肝炎ウィルスのどれかに感染して発症しますが、そのうち慢性肝炎に移行する可能性があるのは「B型」と「C型」になります。

ちなみに日本ではこの5つの中ではB型とC型が一般的で、特に北日本と沖縄にB型が多いと指摘する研究もあります。


急性肝炎はウィルス感染後1~6ヶ月の潜伏期間を経て発症しますが、症状はごく軽微なケースが多くなります。数週間から長くて2ヶ月程度で回復し、治癒後は半年程度で終生免疫が成立し、A型・B型肝炎は再感染の恐れもありません。

ただし前述のとおりB型肝炎とC型肝炎は慢性化するリスクがあるため、自己判断で治療を中断しないことが大切です。


「B型肝炎」の原因の大部分は母子感染か、あるいは乳幼児期に受けた予防接種などからくる感染と言われます。

成人のB型肝炎は、その多くが一過性(急性肝炎)に終わります。

ただしB型肝炎ウィルスは増殖力が強く完全な排除が難しいため、油断は禁物です。


「C型肝炎」もB型と同じく、血液を介してウィルス感染しますが、感染力はB型に比べると弱いです。

ただしC型肝炎の過半は持続感染者となり、本人の自覚症状が無いままに症状が進み、放置すると最終的に肝硬変や肝がんになります。

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国内のウィルスのキャリア(感染者)は潜在患者を含め、B型肝炎で100~150万人、またC型肝炎で150~200万人位と推定されています。

会社の健康診断では通常肝炎ウィルス検診が含まれませんが、そのため感染の発見が遅れがちなことも、影響していると言われます(市町村で任意の肝炎ウイルス検査(原則として無料)が行われているので、そちらを利用しましょう)。

感染者がすべて肝炎を発症するわけではなく、キャリアが実際に肝炎を発症する率は、B型では1割程度、C型では7~8割程度と言われます。

C型肝炎から慢性肝炎に移行するケースが圧倒的に多く、またその確率もかなり高いということですね。


なお、一般に「肝炎は感染しやすい」と誤解されていますが、C型肝炎は感染力がもともと弱く、キャリアの血液が直接体内に入ることでもない限り、まず感染することはありません。

握手したり、同じお風呂やトイレを使ったり、食事で同じ鍋や皿からいっしょに食べたりして感染するようなことはまずありませんので、日常生活においてとくに感染を心配することはないでしょう。


ただし「血液を通じての」感染はあり得ますので、キャリアの人と同じカミソリや歯ブラシを使ったりするのは止めましょう。

また家族にキャリアの方がいる場合は、念のために、家族全員が健康診断を定期的に受診するとよいでしょう。


1989年に検査法が確立されたC型の肝炎ウィルスは、「輸血感染」つまり血液を介しての感染が多いことが、明らかになっています。


特に感染リスクが現在より高かった「1992年以前に輸血を受けたことのある人」は、注意が必要とされます。

なぜなら、C型肝炎が発見される前は、予防接種などで同じ注射針を使い回していることが多かったためです。

1960~70年代に輸血などによる血液を介してウィルスに感染後、ほとんど症状の無いまま40年以上も経ってから、肝臓がんを発症する高齢者も少なくありません。



今日の医療機関では、感染症に対する意識が大きく高まっていることもあり、医療現場で感染することはまずありません(もっとも、「採血針の使い回しをしていた診療所が行政指導を受けた」という報道も時おり見られ、100%安心とまでは言えませんが…)。


また、B型の肝炎ウイルスによって慢性肝炎となるケースは、出産時の母児間感染(母親から子供への感染)が原因の大部分を占めています。


乳幼児は一般に免疫機能が未発達なため、感染しても体内からウィルスを排除することができずキャリアとなり、やがて大人になってから慢性肝炎を発症するのです。


なお、急性肝炎のなかには、発症例は非常に少ないものの、ごくまれに急速かつ高度の肝機能障害によって意識障害を起こし、場合によっては死に至る「劇症肝炎」と呼ばれる危険な症状も含まれています。

急性肝炎で唯一気をつけるべきなのは、この「劇症肝炎」へと進行させないことです。


日本では劇症肝炎が出現するのは急性肝炎患者数の約1%であり、過度に心配する必要こそありませんが、それでも急性肝炎が疑われる段階で病院は血液検査を行い、肝細胞がどの程度の障害を受けているかについてのチェックを行います。


急性肝炎は目に見えて症状が表れることがむしろ稀で、本人が病院に行く間もないうちに、自分でも気づかないまま治ってしまうことすらあります。

病院で血液検査を行えば肝機能数値の異常が判明しますが、初期症状の段階では、専門医ですら判定困難なケースもあるようです。


急性肝炎から劇症肝炎化する万一のリスクを考えるなら、身体の異常を感じた段階で病院で検査を受けるところまでは、自らの意思と判断でたどり着かねばならないことを肝に銘じておきましょう。


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肝炎の治療~薬・インターフェロン・食事と運動



肝炎は多くの場合、病状がかなり進まない限り、自覚症状がほとんどありません。


一般的には健康診断の尿検査や血液検査(ALT[GPT]やAST[GOT]など肝機能数値の異常)から肝炎の疑いがあると診断され、精密検査で発覚することが多いようです。


肝炎ウィルス検診は一般企業の定期検診では通常含まれないので、自分から意識的に受診する姿勢も必要です。

自治体による原則無料の肝炎ウィルス検査(血液検査)を、保健所や指定医療機関で受けるようにしましょう。

そして肝炎とわかった場合は、特に自覚症状がなくとも病院で早期の治療をうけることが、後々のためにも大切になってきます。


急性肝炎の治療の基本はとにかく安静にしていることが第一となり、重症化の恐れがないと判断された場合は、薬物治療や長期入院の必要はありません。肝臓の機能を十分に回復させることに主眼が置かれます。


慢性肝炎の治療法は、大きく「薬物療法」と「食事・運動療法」の2つに分けられます。


B型肝炎は現在、母子感染を防ぐ出産時の予防手段(出産後の子供へのワクチン投与)が確立されています。

またB型肝炎となった場合でも、主に薬によってウィルスの増殖を抑える治療法が用意されています。


B型肝炎の抗ウィルス療法にはインターフェロンの他、ウイルスの増殖を強力に抑えこみかつ副作用も少ない内服薬を用いた「核酸アナログ製剤治療」があります。

現在は「ラミブジン」「アデホビル」「エンテカビル」が保険適用となっています。1年間の投与による著効率は、約30%と言われます。

核酸アナログ製剤治療は長期にわたる薬の服用が必要ですが、ウィルスを消滅させるのではなく、いわばその動きを止めるだけなので、薬を中止すると再発の恐れがあります。そのため絶対に自己判断で中止してはなりません。


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C型肝炎ウイルスの除去を目的として投与される「インターフェロン」は、肝炎の治療薬としてすでによく知られています。

インターフェロンはその登場時こそガンの薬として注目されたものの、その後は肝炎ウィルスの治療薬として評価が確立することになりました。

ただしその成功率は高くなく、また関節痛や嘔吐など副作用のリスクもあることから、事前に血液検査を行ってウィルスの遺伝子タイプや量を調べ、さらには患者の年齢や体力なども考慮して、患者の状況に応じた慎重な投薬が行われてきました。


2001年以降、「ペグ(PEG)インターフェロン」というインターフェロンの改良型が登場しました。

これまでインターフェロン単体によるC型肝炎ウィルスの除去率は10%程度と低いことが難点でしたが、改良されたこのペグインターフェロンによって抗ウィルス効果が高まり、除去率も大幅にアップしました。

ペグインターフェロンは注射による投与が週1回で済むため患者の負担も大きく減り、また従来のインターフェロンでみられた発熱などの副作用も、大幅に軽減されました。


現在、日本人に多くインターフェロン治療の効きにくい「高ウイルス量症例のC型肝炎」に対しては、ペグインターフェロンに「リバビリン」という経口薬を併用するのが、標準治療となっています。

これによりC型肝炎では、約50%の治療効果が期待できるようになりました。


2011年には、C型肝炎のウィルス複製に必要な酵素「プロアテーゼ」の発生を阻害する経口薬が発売されました。従来のペグインターフェロンとリバビリン、そしてこのプロアテーゼ阻害薬の3剤を併用する療法の登場により、著効率は70~90%へと飛躍的に改善しています。

さらに2014年9月には、インターフェロンを使用しない(INSフリー)の内服薬が、国内ではじめて保険適用治療として認可されました。

現在もC型肝炎の治療薬の開発・販売は世界的レベルで活発な状況にあり、その完全克服に大きな期待が寄せられています。


慢性肝炎は病状が数十年単位でゆっくり進行するので時間的余裕が持てるぶん、忙しさにかまけ放置する方も少なくありありません。

しかし副作用を嫌がってウィルス除去の治療を遅らせていると、その間に肝炎や肝硬変が進み、ウィルスの除去率も下がってしまいます。


残念ながら肝炎ウィルスは、投薬治療を通じても100%根絶することが難しいのが現状です。薬によってウィルスの活動を止めたり、あるいはウィルスを大きく減らしていくことはできますが、だからといって症状が重篤化するまで放置してもよいことにはなりません。

一般に投薬治療は開始年齢が若いほど、また肝炎の進行が初期の段階であるほど、治療効果も高まると言われます。

C型肝炎ウィルスに感染しているにも関わらず、病院で治療を受けていない患者の数は120万人に達すると見られています。

できるだけ早い段階で肝炎ウィルス検査を受け、治療を開始して病状を進行させないことが大事です。


国と都道府県では、核酸アナログ製剤治療・インターフェロン治療のいずれについても、医療費の助成を行っています。

医療費助成による自己負担限度額の軽減を受けるには自治体への申請が必要になるため、まずはお住まいの市区町村に問い合わせてみるとよいでしょう。

各自治体の「肝炎ウィルス検査」についての取組(厚生労働省)


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食事療法においては、「日々バランスの良い食事を取ること」がまず大切になります。

一般に慢性肝炎には高たんぱく・高ビタミンの食事がよいと言われますが、だからといってバランスを欠いて大量に摂取した場合、かえって肝臓に余分なエネルギーが蓄積して肝炎を悪化させるケースもあります。


また食事療法はきわめて長い期間に渡って行われるため、バランスを欠いた食事を続けていると、どうしても栄養過多になりがちです。


したがって、一部の栄養を多く取ることよりも、日々の食事内容にかたよりが無いように気をつけながら、一日三食の食生活を規則正しくおくることに重点を置くようにしましょう。

ちなみに、食後すぐに運動すると肝臓の血液量が減少しますので、食後30分~1時間程度は安静にして、動くのはその後にしましょう。


運動についても、一昔前は肝炎の患者は体力を温存するためできるだけ安静にするほうが良いと言われていました。

しかし今日では、ウォーキングなどの持久力をつける運動を適度に行ったほうがよいとされています。


日ごろから有酸素運動(ウォーキングなど)によって適度に身体を動かすことで、適度に発達した筋肉が、肝臓が弱ったときに糖の代謝や有害物質の分解を助けてくれるからです。

とりわけ肥満が原因で肝臓病になった場合、適度な運動療法は特に有効とされています。


肝臓の機能が大きく悪化している場合など除いては、多少の運動をともなったごく普通の生活をする方がよいと考えておきましょう。

会社勤めの方も、よほど激務や長時間残業が常態化しない限りは、いつもどおりに働いてかまいません。


また急性肝炎・慢性肝炎とも、アルコールの摂取は症状の悪化を早めるので「原則禁酒」する必要があります。

病状が重篤化した場合を除いて、アルコールが原因の場合、禁酒するだけでも肝臓の働きはかなり回復します。


もっとも、量を少量にとどめるならば飲酒が許可される場合もあるようですので、アルコールを含めた食事療法については治療医とよく相談し、その指導に従うことがもっとも大切になります。

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参考関連サイト


  • 脂肪肝の症状と治療 食事療法と運動
  • 脂肪肝のための食事~食事療法のポイント 1分理解
  • 膵炎とは~急性膵炎と慢性膵炎の原因・症状・治療


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